よい食育はきれいな歯から

当院では、歯科の食育として「糖質の過剰摂取の防止」と「咀嚼(噛むこと)の大切さ」についてご提案します。

生涯健康な生活を送るためには、糖質を控えてしっかりと噛むことを意識した食生活が必要です。
”健康のためにどんな食事をどのように食べるのか” ぜひ私たちと一緒に考えましょう。

現代の日本の食事では甘いものや柔らかいものに人気があり、多くの人に好まれています。

甘いものや柔らかいものは美味しくて食べやすいです。こういったものを多く摂取する食事は現代人の身体に害を与えることになります。

美味しいものが溢れている飽食の時代は有難いことですが、そろそろ本気で食事を見直す時期にきています。

糖質(特に砂糖)の過剰摂取に気をつけましょう

糖質(特に砂糖)の過剰摂取による問題は、まず最初にお口の中に発生します。

糖質の過剰摂取を継続すると、お口の中だけでなく全身に影響します。

なにげなく摂っている毎日の食事を意識して見直してみることで、糖質の過剰摂取を防ぐきっかけになります。

糖質(特に砂糖)の過剰摂取が引き起こす症状
【口腔内】
  • むし歯
  • 歯肉の炎症
  • 歯が失われる
【全身】
  • 生活習慣病の始まりであるメタボの原因になる
  • タンパク質が糖化され、老化を進めるAGE(※)が産生される
    • 肌の弾力が失われてシワやたるみができる
    • 血管が硬くなり動脈硬化を起こす
    • 骨がもろくなる
    • 白内障を起こす
    • アルツハイマー病を引き起こす 等
  • ストレスの原因になり精神的に不安定になる
  • 体内のカルシウムが奪われる

※Advanced Glycation End Products(終末糖化産物)=タンパク質と糖が加熱されてできた物質。強い毒性を持ち老化を進める原因物質とされている。

甘く感じるものが糖質?

糖質を含む食べ物は「甘いもの」だけではなく「甘く感じない」ものもあります。
その「甘く感じない」糖質は、米や小麦粉といった穀類、芋類に含まれている「でんぷん」です。

普段の食事では「甘いもの」と「でんぷん」が主な糖質源になっています。

主食であるごはんやパンにはでんぷんが含まれているので「甘く感じない」糖質を摂取していることになります。 3度の食事以外に間食を多く摂っていると、糖質の過剰摂取になる恐れがあります。

例えば「甘く感じない」せんべいやスナック菓子は、米や小麦、とうもろこし、じゃが芋が主原料です。 これらのお菓子にはでんぷんが多く含まれているので糖質を摂取していることになります。

甘くないお菓子だからといって、いくら食べても大丈夫といわけではありません。

炭水化物-食物繊維=糖質

最近では、糖質と混同して「炭水化物」という言葉が使用されたりしますが、糖質と炭水化物は同じものではありません。

炭水化物には食物繊維が含まれています。炭水化物から食物繊維を除いたものが糖質です。糖質と食物繊維では体内作用が大きく異なります。

食物繊維は消化吸収されずに腸まで届き、腸内では老廃物を体外へ排出するなど腸内環境を整える役割があります。

食物繊維は大切な栄養素です。炭水化物の摂取をやめることで糖質の過剰摂取を避けることは考えないでください。

糖質はタンパク質、脂質と並ぶ三大栄養素

糖質、タンパク質、脂質は身体を作る大切な栄養素でありエネルギー源です。

糖質は1日にどれくらいの量が必要なのでしょうか。

厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」によると、糖質の一日最低必要量はおよそ100gとされています。
(糖質は、ぶどう糖をエネルギーとする脳、神経細胞、赤血球、腎尿細管、精巣や酸素不足の骨格筋等に使われます。)

食品にどれほどの糖質が含まれているか見てみましょう。

たとえばご飯(精米白ごはん)を1日3食いただくと、糖質摂取量は165.6gになります。
1日3食の主食だけで、1日最低必要量の糖質を摂取することになります。

甘いものはもちろん、甘く感じないお菓子類、ジュース等にも多くの糖質が含まれていますので摂取量に注意しましょう。

食材1食当たりの量糖質量
精米白ごはん
精米白ごはん
150g(茶碗1杯分)55.2g
玄米ごはん
玄米ごはん
150g(茶碗1杯分)51.3g
もち
もち
50g(切り餅1個)24.8g
食パン
食パン
60g(6枚切り1枚)26.8g
ロールパン
ロールパン
50g(1個)21.0g
クロワッサン
クロワッサン
30g(1個)12.0g
炭酸飲料
炭酸飲料
500ml50~60g
スポーツ飲料
スポーツ飲料
500ml25~30g
清涼飲料水
清涼飲料水
500ml40g
無調整豆乳
無調整豆乳
200ml6.1g
牛乳
牛乳
200ml10.1g
あめ
あめ
100g97.5g
ガム
ガム
100g96.9g
せんべい
せんべい
100g85.7g
キャラメル
キャラメル
100g77.9g
ドーナツ
ドーナツ
100g59.1g
チョコレート
チョコレート
100g51.5g
ポテトチップス
ポテトチップス
100g50.5g
大福
大福
100g50.3g
ショートケーキ
ショートケーキ
100g46.5g
シュークリーム
シュークリーム
100g22.1g
オレンジゼリー
オレンジゼリー
100g15.2g
プリン
プリン
100g14.7g
コーヒーゼリー
コーヒーゼリー
100g9.5g

咀嚼不足に気をつけましょう

咀嚼不足はさまざまな症状を引き起こします。

特に子どもたちには食事の影響が顕著に現れます。

小さい頃から噛むことを意識して食事をするように心がけましょう。

咀嚼不足が引き起こす症状
  • 顎の筋力の低下
  • 子供の顎の発育不全
  • 口呼吸
  • 歯列不正
  • 脳への血流低下
  • 唾液の減少 等

咀嚼の大切さ

食事の目的の1つは、噛むことによりさまざまな機能を獲得することです。

  1. 摂食機能(食べる機能)
    食べ物を口に入れて、しっかりと噛んで咀嚼し飲み込む機能
  2. 栄養摂取機能
    食べ物を体内で消化して吸収し、食べ物に含まれる栄養素の代謝によって体を作り、エネルギーに変える機能

「ひみこの歯がいーぜ」

噛むことの効果を表した標語です。

卑弥呼の時代(弥生時代)の人たちは、現代人に比べて噛む回数が何倍も多かったと考えられていることからできた標語です。

卑弥呼
肥満予防 よく噛んで食べることで満腹中枢が刺激され食べ過ぎを防ぐ
味覚の発達 食べ物の形や固さ、味わいを感じることができるようになる
言葉の発達 口の周りの筋肉をよく使うことで、あごの発達を助け、表情が豊かになったり、言葉の発音がきれいになる
脳の発達 脳細胞の働きが活発になり、子供の知育を促す大人では認知症の予防につながる
歯の病気予防 唾液の分泌が促され、むし歯や歯周病の予防につながる
がん予防 唾液に含まれる酵素が発ガン性を抑えるので、がんの予防につながる
いー 胃腸の働きを促進 消化酵素の分泌を促進する
全身の体力向上と全力投球 身体が活発になり、力いっぱい仕事や遊びに集中できる

口は胃や腸などの消化器官へつながる入り口ですので、消化のためにも噛むことは重要です。 野菜など繊維性の食品や歯ごたえのあるものをよく噛むことで、口の中は自然に清掃されて歯や顎の発達を促します。

軟らかいものばかり食べたり、硬い大きなものを一度に口に入れていたりすると、口の動きや舌の動きが鈍くなり、常に口の中に食べカスが残る状況になります。このような口内環境はむし歯になりやすく好ましいものではありません。

繊維性のあるもの、歯ごたえのあるものを食事に組み入れ、食生活の土台作りをすることでむし歯になりにくい口内環境を整えていきましょう。

よく噛むための工夫

よく噛むための工夫

  1. 急いで食べない
    ゆっくりと味わって食べましょう。食べ物によって噛みごたえは違います。 噛みごたえのある食べ物は、ひと口30回を目安によく噛んで食べましょう。 いきなり30回はしんどいようでしたら、普段の回数より少し多めに噛むことを意識しながらよく噛むことに慣れていきましょう。
  2. 飲み物で流し込まない
    食べ物が口の中にある時は飲み物で流し込まないようにしましょう。 流し込むことで、食べたものが細かくならないうちに胃に送られてしまうので消化によくありません。 よく噛むと食べ物が細かくなり、飲み物に頼らず自然に飲みこめるようになります。

「まごわやさしい(まごはやさしい)」

食生活を改善するために効果的で栄養価の高い食材の頭文字を取った標語です。

「まごわやさしい」は昔からあるおなじみの食材ばかり。

普段の食事に「まごわやさしい」の食材を少しプラスするだけで、バランスがよく、噛む回数を増やすメニューを簡単に作ることができます。

分類 食材例 栄養素
豆類
  • 納豆
  • 大豆
  • 豆腐など
豆類
  • タンパク質
  • マグネシウム
種実類
  • ごま
  • ナッツ類
種実類
  • 不飽和脂肪酸
  • ビタミンE
海藻類
  • わかめ
  • ひじき
  • 昆布など
海藻類
  • ミネラル
  • マグネシウム
野菜類
根菜類
  • ほうれん草
  • 人参
  • トマト
  • 大根など
野菜類・根菜類
  • βカロテン
  • ビタミンC
魚介類
  • あじ
  • しらす
  • あさり
  • いかなど
魚介類
  • タンパク質
  • オメガ3
  • 鉄分
きのこ類
  • しいたけ
  • しめじ
  • えのきなど
きのこ類
  • ビタミンD
  • 食物繊維
芋類
  • じゃが芋
  • 里芋
  • 長芋など
イモ類
  • 食物繊維
  • 炭水化物

「まごわやさしい」の食材の特徴

「まごわやさしい」の食材はご飯との相性がよく、 ビタミン、ミネラル、カルシウム、たんぱく質などの栄養素がバランスよく取り入れられています。

豆類に含まれるマグネシウムは、歯のエナメル質を構成している元素で歯質の強化につながります。

ごまには抗酸化作用があるため、歯茎を始めとして全身の細胞の老化を防いでくれます。

わかめなどの海藻類には歯を作る上で最も重要な材料であるカルシウムが沢山入っています。

野菜には、ビタミンやベータカロチンなどが沢山含まれています。

魚には、最近注目されているEPA(※1)やDHA(※2)などの必須脂肪酸などが沢山含まれています。

※1:エイコサペンタエン(eicosapentaenoic acid)高価不飽和脂肪酸。中性脂肪を下げる効果が高い。
※2:ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid)高価不飽和脂肪酸。脳や神経の機能を高める働きがある。

「まごわやさしい」の食材を毎日の食事の中に取り入れましょう

「まごわやさしい」の食材を食事に取り入れることで、 よく噛んで食べることに繫がるだけでなく、強い歯が作られ、健康な身体を維持することができるようになります。

これらの食材を1食の中で揃えることが推奨されていますが、1食の中に取り入れることが難しいようなら1日の食事の中に取り入れてみましょう。献立を考える時や栄養バランスをチェックしたい時には「まごわやさしい」の食材を思い出してみてください。

「ひみこの歯がいーぜ」と「まごわやさしい」でお口と身体の健康を維持しましょう。

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